新たな経済成長要因と、新たな資本主義のありかたへの期待(連載 第2回)

連載「新たなインパクトファンドが個人投資家資金の流れを変える!?」第2回

Q.2.

株式市場全体への長期投資が成功するには、その期間に経済が右肩上がりに成長し続けるという大前提が必要だと考えています。しかし、私たち人類の経済活動が地球の限界を突破しているという警笛も鳴らされる現在、そして近未来においては、経済成長という前提が崩れるのではないでしょうか?

A.2.

日本では第二次大戦後の復興やグローバル化で、経済が右肩上がりに成長し続けましたが、株式市場は1989年12月にピークをつけ、2012年末まで下がり続けました。その後、かなり回復したとはいえ、いまだに1989年のピークにはとどいていません。それに加えて、ご指摘のように、地球環境問題など、人類の経済活動が地球の限界を超えていることが1990年代から認識として広まりはじめました。現在では、2050年に温暖化ガス排出量をネットゼロとすることが世界的な目標となっています。

2021年11月のCOP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)の前後には、中国、米国、インドの世界三大温暖化ガス排出国(この三ヵ国で世界の排出量の50%を占めます)が、削減目標を公表するという進展がみられました。

最近では、気候変動を解決するには脱成長コミュニズムが必要だとする書籍がベストセラー第一位となっています。ただ、この書籍の論点には数々の問題があると思います。とくに、脱成長をどのようにして達成できるのか?脱成長すると世界経済はどうなるのか?という点については説明がされていません。

個人的にはマルクス主義が正しいとは考えておらず、一方で現在の資本主義にも多くの問題があると考えています。私の考え方は、脱成長ではなく、グローバルな資本主義の、新たなバランスを達成することと、またイノベーションによる新たな解決策を生み出す必要がある、というものです。これが容易でないことはいうまでもありません。

資本主義はこれまでもさまざまな問題を抱え、大不況もありましたし、新たな貧困と呼ばれる問題や現在のように地球の限界に突き当たっているのも、資本主義の結果と言えます。しかし、一方では産業革命以来、世界の人々の生活水準や自由な生活が、当時からすれば想像も出来ないほど大幅に改善されたことも事実です。

容易な解決方法を見つけ出せるわけではありません。政府や企業、個人も含めて、多くの人が、グローバルに議論し、望ましい解決方法を探り、合意した方向に向けて、皆で取り組んでいくのが、自由主義であり資本主義の在り方です。効率がよいとは言えませんが、多くの分野で専門家の知恵を精一杯生かして、この問題を解決していこうというのが、1990年代から続く流れとなっています。このようなグローバルな流れが、新たな経済成長要因と新たな資本主義のありかた、につながるのではないかと期待しています。